褥瘡(床ずれ)の評価と看護におけるNPUAP分類の活用

褥瘡(床ずれ)は、長時間同じ体位でいることで皮膚やその下の組織に圧力がかかり、血流が阻害されて発生する傷です。褥瘡の重症度や進行度を正確に評価し、適切なケアを提供するためには、NPUAP分類が非常に役立ちます。このブログでは、NPUAP分類の詳細とその活用方法について説明します。

1. 「NPUAP分類」は何を判断するもの?

NPUAP分類とは?

NPUAP分類(National Pressure Ulcer Advisory Panel Classification)は、褥瘡の深さと進行度を評価するための標準的なシステムです。この分類は、褥瘡の重症度を判断する際に使用され、以下の4つのステージに分かれています。それぞれのステージは褥瘡の状態に応じた治療方法を決定するために重要です。

ステージⅠからステージⅣまでの概要

  1. ステージⅠ(カテゴリⅠ):皮膚が赤くなり、圧力をかけた部分が白くならない状態です。皮膚の色が変わっているだけで、皮膚に開放的な損傷は見られません。この段階で適切なケアを行うことで、褥瘡の進行を防ぐことができます。
  2. ステージⅡ(カテゴリⅡ):皮膚の表層が破れて、部分的な欠損や水疱が見られる状態です。皮膚が浅く損傷しており、適切な処置をしないと進行する可能性があります。
  3. ステージⅢ(カテゴリⅢ):皮膚の全層が欠損し、皮下組織まで達している状態です。傷が深く、創傷が広がることで、より専門的な治療が必要になります。
  4. ステージⅣ(カテゴリⅣ):皮膚だけでなく、筋肉や骨まで損傷している状態です。褥瘡が非常に深く、骨や筋肉が見えることもあります。最も重度の状態で、外科的処置や専門的な治療が求められます。

褥瘡の進行度を正確に把握することは、適切な治療を選択するために欠かせません。たとえば、ステージⅠの発赤が見られる場合には、圧力を軽減するための体位変換やスキンケアを行うことで、さらなる悪化を防ぐことができます。

2. 「NPUAP分類」はこう使う!

ステージ別の看護ケア

ステージⅠのケア

  • 体位変換: 圧力がかかっている部位を定期的に変えることで、血流の改善を図ります。通常、2時間ごとに体位を変えることが推奨されています。
  • スキンケア: 皮膚を乾燥させないように保湿し、清潔を保つことが重要です。乾燥や湿疹を防ぐために、優しい洗浄剤を使用し、保湿クリームで皮膚をケアします。

ステージⅡのケア

  • ドレッシングの使用: 部分的な欠損や水疱には、ハイドロコロイドドレッシングなどの湿潤環境を保つドレッシングが推奨されます。これにより、傷が乾燥するのを防ぎ、治癒を促進します。
  • 感染予防: 創傷が浅いとはいえ、感染のリスクがあるため、清潔な環境を保ち、適切なドレッシング材を使用します。

ステージⅢのケア

  • 創傷の管理: 深い欠損があるため、創傷の深さを把握し、適切なドレッシング材を選択する必要があります。ハイドロジェルやアルギン酸など、創傷の状況に応じた材料を使用します。
  • 感染制御: 深い創傷には感染のリスクが高いため、抗菌剤を含むドレッシングや感染の兆候を見逃さないようにします。

ステージⅣのケア

  • 外科的治療: 重度の褥瘡では、外科的処置が必要になることがあります。壊死した組織の除去や、必要に応じて皮膚移植が行われることもあります。
  • 栄養管理: 褥瘡の治癒には、適切な栄養が必要です。高カロリーで高タンパクな食事を提供し、栄養不足による回復の遅延を防ぎます。

褥瘡のステージに応じたケアを行うことで、傷の進行を防ぎ、回復を促進することができます。たとえば、ステージⅣの褥瘡には、専門的な治療が必要ですが、早期に適切なケアを行うことで、より良い結果が得られる可能性が高まります。

3. 「NPUAP分類」を看護に活かす!

看護師の役割と教育

看護師は、褥瘡の評価とケアにおいて中心的な役割を果たします。NPUAP分類を用いることで、褥瘡の状態を正確に把握し、適切な治療法を選択できます。また、看護師は患者やその家族に対して褥瘡の予防方法やケアの重要性を教育し、リスクを最小限に抑えることが求められます。

ケーススタディと実践

ケーススタディ1: ステージⅠの褥瘡

背景: 長時間ベッドに横たわっていた高齢者が、仙骨部に発赤を示した。 対応: 体位変換を2時間ごとに行い、皮膚の保湿を徹底。発赤が見られる部分を圧迫しないように、体位変換を適切に行う。

ケーススタディ2: ステージⅢの褥瘡

背景: 長期間の圧迫により、皮膚が深く損傷している状態。 対応: 創傷の深さに応じたドレッシングを使用し、感染の兆候を常にチェック。必要に応じて外科的処置を検討する。

教育と予防

看護師は褥瘡の予防について患者やその家族に教育を行います。体位変換の方法や、体圧分散寝具の使用について説明し、日常生活での注意点を伝えることで、褥瘡の発生リスクを減少させます。

引用・参考文献

  • NPUAP/EPUAP分類による褥瘡のステージ分類(2024年版)
  • DESIGN-R®2020による褥瘡の深達度分類
  • 褥瘡ケアに関する最新ガイドライン

褥瘡とは?その原因から予防まで徹底解説

褥瘡(じょくそう)とは、長時間にわたって同じ体位を維持することで、皮膚やその下の組織が圧迫されて血流が悪化し、最終的に皮膚が壊死する状態です。高齢者や寝たきりの方、または慢性疾患を抱える方が特にリスクが高いです。この記事では、褥瘡の原因、リスク、予防、治療について詳しく説明します。

褥瘡とはなんでしょうか?

褥瘡は、皮膚が圧迫されることによって血流が減少し、皮膚やその下の組織が壊死する状態です。この状態が進行すると、皮膚に潰瘍(かいよう)ができることになります。褥瘡は圧力によって血流が悪化するため、圧迫を受ける部位の皮膚が栄養不足に陥り、最終的に壊死します。

褥瘡(じょくそう): 長時間同じ体位でいることで皮膚が圧迫され、血流が悪化し、皮膚や下層組織が壊死する状態。
潰瘍(かいよう): 皮膚や粘膜がただれてしまう状態で、褥瘡の場合は皮膚が深く損傷することがあります。

褥瘡はなぜできるのでしょうか?

褥瘡ができる主な原因は、圧迫による血流の阻害です。体の一部が長時間同じ位置に固定されると、その部分の血管が圧迫され、血液が十分に流れなくなります。この血流の減少が、皮膚や下層組織に十分な酸素と栄養を供給できず、細胞が壊死する原因となります。また、摩擦やせん断力も褥瘡の原因となることがあります。

圧迫(あっぱく): 体の一部に長時間力が加わることで、血流が圧迫される状態。
摩擦(まさく): 皮膚と布などが擦れ合うことによって皮膚が傷つくこと。
せん断力(せんだんりょく): 皮膚が異なる方向に引っ張られる力で、皮膚が内部で引き裂かれることがあります。

褥瘡はどんな人がなりやすいのでしょうか?

褥瘡になりやすいのは以下のような人々です:

  • 寝たきりの方: 体位を変えにくく、同じ部位に長時間圧力がかかり続けるため。
  • 高齢者: 年齢とともに皮膚が薄くなり、弾力が失われるため。
  • 栄養状態が悪い方: 十分な栄養が摂取できないと、皮膚の修復能力が低下します。
  • 糖尿病や循環器系の疾患がある方: 血流が悪化しやすく、褥瘡が発生しやすくなります。

補足説明

栄養状態が悪い: 食事から必要な栄養素が不足している状態。皮膚の健康を保つために、十分な栄養が必要です。

褥瘡になりやすい体の部位はどこでしょうか?

褥瘡が発生しやすい部位は以下の通りです:

  • 仙骨(せんこつ): 背中の下部で、尾骨の上に位置する骨の部分。長時間座っていると圧力がかかりやすい。
  • かかと: 足の裏側にあり、体重が集中しやすい部分。
  • お尻: 座った状態で圧力が集中しやすい部位。
  • 肘や膝: 圧迫や摩擦が多く、皮膚が損傷しやすい部位。

補足説明

仙骨(せんこつ): 背骨の下部で、体が圧力を受けることが多い部分。
かかと: 足の後ろ側で、立っているときに圧力がかかりやすい部分。

褥瘡の前ぶれはどのような状態でしょうか?見分け方はあるのでしょうか?

褥瘡の前兆としては、以下のような状態が見られます:

  • 皮膚の赤み: 圧迫されている部分が赤くなる。
  • 皮膚の温かさ: 赤くなった部分が通常よりも温かく感じることがあります。
  • 皮膚の硬さ: 触ると周囲の皮膚よりも硬く感じることがある。
  • 痛み: その部分に痛みを感じることがある。

補足説明

赤み: 血流が増加して皮膚が赤くなる状態。褥瘡の早期兆候として重要です。
硬さ: 皮膚や組織が壊死し始めると、触ると硬く感じることがあります。

褥瘡かもしれないと思ったらどうしたら良いのでしょうか?

褥瘡の兆候を見つけた場合、迅速な対応が重要です。以下のステップを踏んでください:

  1. 医療機関の受診: 皮膚科や内科の医師に相談し、診断を受ける。
  2. 体位の変更: 圧迫を減らすために、体位を定期的に変更する。
  3. 専門的なケア: 褥瘡専用のドレッシングやケア用品を使用する。
  4. 栄養管理: 健康な皮膚の維持と回復を促進するために、適切な栄養を摂取する。

補足説明

医療機関の受診: 専門の医師に診てもらうことで、褥瘡の状態を正確に診断し、適切な治療を受けることができます。
ドレッシング: 褥瘡の治療に使用される特殊な包帯やシートで、創傷の保護と治癒を助けます。

褥瘡の治療とケア方法

褥瘡の治療にはいくつかの方法があります。以下に詳しく説明します:

1. ぬり薬

褥瘡の治療に使用されるぬり薬は、感染を防ぎ、炎症を抑えるためのものです。抗生物質入りのクリームや軟膏が一般的に使用されます。

2. ドレッシング

褥瘡の部位に適切なドレッシング(創傷用包帯)を使用することで、傷を保護し、湿潤環境を提供します。ドレッシングには以下の種類があります:

  • ハイドロコロイドドレッシング: 湿潤環境を保ち、創傷の治癒を促進します。
  • ハイドロジェルドレッシング: 水分を供給し、乾燥を防ぎます。
  • アルギン酸ドレッシング: 創傷からの分泌物を吸収し、清潔な環境を保ちます。

3. 消毒・洗浄

創傷部位は清潔を保つために、適切な消毒と洗浄が必要です。清潔な生理食塩水や専用の消毒液を使用して、感染のリスクを減らします。

4. 手術

褥瘡が進行して壊死が広がった場合、手術が必要になることがあります。壊死した組織の除去や、場合によっては皮膚移植が行われることがあります。

補足説明

ハイドロコロイドドレッシング: 湿潤環境を提供し、創傷を保護します。褥瘡の治癒を助けるために使用されます。
アルギン酸ドレッシング: 創傷の分泌物を吸収し、創傷を清潔に保つために使用されます。

褥瘡の予防

褥瘡の予防には、以下の方法が効果的です:

1. 体位変換の方法と時間間隔

体位を定期的に変えることで、同じ部位に圧力がかかり続けるのを防ぎます。通常、2時間ごとに体位を変えることが推奨されます。

2. 体圧分散寝具

体圧を均等に分散するための寝具やクッションを使用することが重要です。例えば、エアマットレスやジェル入りクッションなどがあります。

3. 栄養

十分な栄養を摂取することで、皮膚の健康を維持し、褥瘡のリスクを減少させます。特にタンパク質やビタミン、ミネラルが重要です。

4. スキンケア

皮膚を清潔に保ち、乾燥や湿気から守ることが重要です。皮膚をこまめに確認し、乾燥や過剰な湿気を防ぐために保湿剤を使用することが有効です。

補足説明

体圧分散寝具: 圧力を均等に分散するために設計された寝具。褥瘡の予防に役立ちます。
栄養: 健康な皮膚を保つために必要な食物からの栄養素。特に、ビタミンCや亜鉛は皮膚の修復に役立ちます。

褥瘡対策チームの役割と活動

褥瘡の予防と治療には、専門のチームが関与することが多いです。以下に、褥瘡対策チームの主な役割と活動内容を説明します。

褥瘡対策チームの役割

  • リスク評価: 褥瘡のリスクがある患者を評価し、予防策を策定します。
  • ケアプランの作成: 各患者に適したケアプランを作成し、実施します。
  • 教育とトレーニング: 医療従事者や家族に対して褥瘡の予防とケア方法について教育します。
  • 患者のモニタリング: 定期的に患者の皮膚状態を確認し、必要な対策を講じます。

褥瘡対策チームの活動内容

  • 褥瘡回診: 褥瘡の進行度を確認し、治療計画を調整します。
  • 褥瘡予防ラウンド: 圧迫や体位変換の実施状況を確認し、改善点を見つけます。
  • 院内勉強会: 褥瘡に関する最新の情報や技術を医療従事者に提供します。

補足説明

リスク評価: 褥瘡が発生する可能性を判断するための評価。医療従事者が行う重要なプロセスです。
ケアプラン: 各患者に合った治療計画。個々の状態に応じて調整されます。